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がんの治療の知識①

最終更新日:
2025/07/23
情報提供者:Hatch Healthcare

がんの治療にはさまざまな方法があります。
がんの治療について正しい知識を持つことは、自分自身が納得のいく治療法を選ぶ上でとても重要です​。

手術、薬物療法、放射線治療といったメジャーな治療法は単独で行われる場合もありますが、がんの種類や進行度によっては複数の治療法を組み合わせて行うこともあります。

がん治療では、緩和支持療法といって、がん治療の副作用をやわらげたり、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めたりする療法も大切な療法の一つです。

ここでは、代表的ながん治療についてわかりやすく説明します。 

勝俣 範之 先生【監修】

日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授

目次

がんの基本

がん治療を大きく分けると手術、薬物療法、放射線治療の3つが治療の柱になっています。

忘れてはいけないのが、緩和支持療法(緩和ケアとも言います)といって、がん治療の副作用をやわらげたり、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めたりする療法も大切な療法として、がん治療には必須な療法とされています。

また、近年は免疫療法や、がんゲノム医療など新しいアプローチも登場しており、治療法の選択肢が増えています。

病状に応じて、集学的治療と称してこれらを組み合わせて行うこともあります。

以下に各治療法の概要をご紹介します。

集学的治療

集学的治療とは、手術・薬物療法・放射線治療など複数の治療法を組み合わせて行う治療方法です​。

複数の治療を組み合わせることで、単一の治療よりも効果が高まる場合があり、臓器の温存や手術範囲の縮小につながることもあります​。

たとえば、手術の前後に抗がん剤や放射線を併用する、放射線と抗がん剤を同時に用いる化学放射線療法など、がんの種類や進行度に応じてさまざまな組み合わせが行われます。

手術

手術は、がんそのものやがんの存在する組織・臓器を外科的に切除する治療法です。

完治を目指して腫瘍を切除することが主目的ですが、部位によっては手術により損なわれる機能や見た目を再建手術で補ったり、痛みなど症状の緩和が目的で行われたりする場合もあります。

一般的に、がんは周囲の組織に広がったり転移したりするため、手術ではがん周辺の正常な組織も含めて少し大きめに切除します​。リンパ節や隣接する臓器を同時に取り除くこともあります。

一方、早期のがんに対しては必要最小限の範囲だけを切除し、体の機能や生活の質(Quality of life: QOL)を保てるように工夫された手術も行われます。

薬物療法

薬物療法は、薬を用いてがんを治したり進行を抑えたり、症状を和らげたりする治療法です​。

手術や放射線が体の特定部位を治療する「局所療法」であるのに対し、薬物療法は血流にのせて薬を全身に行き渡らせる「全身療法」として行われることがほとんどです​。

薬物療法には、大きく分けると、「化学療法(殺細胞療法)」「ホルモン療法」「分子標的薬」と3つに分けられます。従来は、副作用の多い化学療法が治療の主体でしたが、最近では、「分子標的薬」といって、がん細胞に特徴である分子を標的としてがん細胞を破壊する治療薬が主体になってきています。「分子標的薬」や「化学療法」に比べると、副作用が少ないのが特徴です。

日本人がノーベル賞を受賞した「オプジーボ」を開発した免疫チェックポイント阻害薬も分子標的薬の一つです。

薬を投与する方法は、飲み薬、点滴や注射、皮下への注射などがあり​ます。

また、薬物療法で使われる薬剤にはさまざまな種類があり、がんができた場所やその種類から選択します。

入院して行う場合と外来通院で行う場合がありますが、最近では外来で行えるケースも増えてきています​。

放射線治療

放射線治療は、エックス線などの放射線を照射してがん細胞を死滅させる治療法です。

手術、薬物療法と並ぶ主要ながん治療の一つで​、臓器を切除することなく体の外からがんの部分に放射線をあてることで​がん細胞を死滅させることができます。

がんによっては、手術と同等以上の治療成績が得られる場合もあります。

放射線治療の目的には、がんを完全に治すことを目指す場合と、症状の緩和を図る場合の2種類があります​。

単独で治療することもありますが、多くは手術や薬物療法と組み合わせて行われます​。

治療は通常、平日毎日、もしくは週に数回のペースで数週間かけて行われます。

治療期間中は定期的に診察を受け、副作用の確認や照射計画の調整を行います。

内視鏡治療

内視鏡治療は、体の中に挿入した内視鏡という細長いカメラ付きの器械を使って行う低侵襲の治療法です。主に早期のがんに対して、腫瘍を内視鏡で切除する目的で行われます。

食道や胃などの早期がんや、膀胱など尿路の早期がんに対してよく行われています。

口や肛門、尿道から内視鏡を挿入して患部にアプローチし、がん病変部を切除します。

消化管では直径約1cmの柔らかい管状の内視鏡を用い、先端のカメラ映像をモニターで確認しながら、内視鏡の先端にある小さな穴から器具(鉗子やメス)を出して腫瘍を切り取ります。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、白血病など血液のがんで行われることの多い治療法です。

患者さんご自身または提供者(ドナー)の造血幹細胞(血液を作るもとになる細胞)を用いて行われます。

移植された造血幹細胞は骨髄で血液細胞(白血球・赤血球・血小板)を新たに作り始め、ダメージを受けた造血機能を回復させます。

造血幹細胞移植には、大きく自家移植(患者さんご本人の細胞を戻す)と同種移植(適合するドナーの細胞を移植する)の2種類があります。

自家移植は主にリンパ腫や多発性骨髄腫などで高用量の抗がん剤治療後に自己細胞で造血機能を回復させる目的で行われ、同種移植は白血病などでドナー細胞による抗腫瘍効果や正常造血の確立を期待して行われます​。

どちらを行うかは疾患の種類や目的によって異なり、医師が患者さんの状態を見て適切な方法を判断します​。

免疫療法

免疫療法は、体が本来持っている免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。

私たちの血液中の白血球は本来、体内にできた異常ながん細胞を見つけて排除しようとする働きを持っています。

しかし、がん細胞がT細胞の働きを抑えるブレーキをかけてしまったり、患者さんご自身の免疫力が弱っていたりすると、免疫の力だけではがんを抑えきれないことがあります​。

そこで、免疫療法では免疫細胞のブレーキを外したり、免疫細胞そのものを活性化させたりすることで、免疫によるがん攻撃力を高める治療を行います​。

免疫療法は、大きく分けると、「免疫チェックポイント阻害薬」と「免疫細胞療法」に分けられますが、「免疫チェックポイント阻害薬」は、前述した「分子標的薬」にも分類される薬剤です。

「免疫細胞療法」としては古くから、がんワクチン療法や樹状細胞療法が研究されましたが、有効性が認められず、保険適用にもなりませんでした。唯一有効性が認められた「CAR-T細胞療法」が承認され、保険適用になっています。

ただし、「CAR-T細胞療法」は血液がんのみに適応であり、固形がんには有効性は認められていません。また、非常に副作用が強く、指定された特定の病院でしか行うことはできません。

このように、免疫療法の主体は、現在では、「免疫チェックポイント阻害薬」になっています。免疫細胞療法は、多く研究されましたが、ほとんどが失敗した療法と言えます。このような有効性が認められなかった療法を、「自由診療」として、効果があるように謳い、高額な費用を要求するクリニックが横行しているので注意が必要です。

がんゲノム医療

がんゲノム医療とは、一人ひとりのがん細胞が持つ遺伝子情報に基づいて最適な治療法を選択する個別化医療のことです。

具体的には、患者さんのがん組織からDNAを解析し、がん関連遺伝子に生じている変異を網羅的に調べることで、その変異に対応した薬剤や治療法を検討するものです。

多数の遺伝子を一度に解析する検査をがん遺伝子パネル検査と呼び、日本でも2019年以降、一部の患者さんを対象に保険適用で実施されています​。

一般に標準治療がなくなった進行がんの患者さんや希少がんの患者さんが対象で、全国のがんゲノム医療中核拠点病院で検査と治療方針の検討が行われます。

がんゲノム医療では、遺伝子検査の結果次第で患者さんごとに異なる治療が提案されます。

ただし、万能ではなく、必ずしも有効な薬が見つかるとは限らない点に留意が必要です。

緩和支持療法(緩和ケア)

緩和支持療法とは、治療による副作用を和らげたり、QOLを高めることを主体にした療法の総称です。

医療用麻薬を使ったり、患者さんの痛みや苦痛に対応する症状緩和や、抗がん剤のしびれを予防するために、手足を冷却したりする療法も含まれます。

また、患者さんのQOLを高めるために、運動を取り入れたり、ヨガをしたり、音楽を奏でることをしたりすることも緩和支持療法に含まれます。

緩和支持療法は、手術や抗がん剤、放射線治療などの3大治療が終了してから行うものと考えられていたのが、最近では、3大治療と併行して行うことで、患者さんがより良く治療を受けられることがわかり、大事な療法として注目されています。

がん治療では、いかに、緩和支持療法をうまく取り入れていくかが、課題と言えます。

まとめ

がんの治療は手術、薬物療法、放射線治療だけでなく、緩和支持療法といった治療の副作用を和らげる治療やQOLを高める療法も大事です。

主治医とよく相談し、自分自身にあった治療戦略を考えていきましょう。

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